賃貸の退去費用の相場は?原状回復にかかる費用や注意点をご紹介

作成: 2021.04.21

更新: 2022.02.08

賃貸物件にお住まいの方は、いずれ訪れる退去時のことが気になりますよね。なかでも、退去費用のことはとりわけ気になるでしょう。
 
そこで本記事では、退去時費用の相場や、退去時の注意点などについてご紹介します。

退去費用の考え方


入居者には借りていた部屋をきれいな状態で返す責任があります。これを「原状回復の義務」と呼びます。
 
よく勘違いされるのですが、借りた時と同じ状態に戻すことではありません。原状回復とは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」で確認することができます。
 
そのなかで、以下のように説明されています。
 

賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること

 
以上より、原状回復の線引きは以下のようになります。

  • 普通の生活をしている上での損耗→大家さんが負担する
  • 故意や過失による毀損→入居者が負担する(原状回復の義務)
  • 地震など不可抗力による被害や、第三者が原因の場合は入居者の負担ではない


ガイドラインには法的拘束力はありません。ただし、裁判の判例を踏まえた内容になっているので、もし訴訟になった場合は同じような判決が出る可能性が高いことから、交渉する上で有効な材料になります。
 

賃貸契約書について

 入居時に賃貸契約書にはしっかり目を通してみてください。賃貸契約書には退去時のルールが記載されており、原状回復とは別の名目で費用がかかる場合があります。
 
主に、「特約」として記載されていますので、気になる方はお持ちの賃貸契約書を確認してみることをおすすめします。 
 

敷金について

敷金は一時的に大家さんに預けるお金で、退去時の原状回復費用に充てられることが一般的です。
 
入居時に敷金を払っている場合、原状回復にかかる費用が敷金より少なければ、余った分が返金されます。また、「敷金なし」の物件では、原状回復にかかる費用を、退去時に追加で支払う必要があります。
 
「できる限り原状回復費用を抑えたい」という方は、記事の後半で紹介する原状回復費用を抑えるポイントについてご説明しますので、ぜひご活用してみてください。

賃貸の退去費用の相場


本章では原状回復にかかる退去費用について、具体的にご説明します。もちろん、原状回復が必要な場所が多いほど、費用は高くなります。
 
3つの視点から原状回復にかかる費用をまとめました。
 

  • 部位
  • 住んでいた期間
  • 間取り

 
実際にかかる費用は、さまざまな条件により変化しますので、あくまで参考程度とお考えください。

部位別の補修費用

 普通に生活していても、部屋に傷が付いたり、汚してしまうこともあります。そのなかでも、とくに多いのが壁と床に傷・汚れがついてしまうケースです。
 
部屋の広さや使われている素材はさまざまですから、補修費用は単位を揃えて比較します。一般的な補修にかかる費用は以下の通りです。

部位 部位別の補修費用相場
壁紙(クロス)の張り替え 800〜1500円/㎡
床(クッションフロア)の張り替え 2500円〜/㎡
畳の表替え 4000円程度/畳

 
ただ、実際には工事を依頼する会社や、必要な材料の過不足などで費用は変わります。さらに、地域や季節によっても価格は変化します。

住んでいた期間別補修費用

建物や設備は住んでいくうちに自然と劣化します。そのため、原状回復にかかる費用を計算する場合に、基準とするのは入居時の築年数(それまでの使用年数)です。
 
入居時に経過していた年数分はあらかじめ差し引いた状態で費用を計算します。原状回復費用を居住年数ごとに分けて、NOW ROOM編集部が独自に平均を算出した結果が以下の通りです。

居住年数 居住年数別原状回復の平均費用相場
〜3年 約5万円
4年〜6年 約6万円
7年〜 約9万円
 

間取り別補修費用

 原状回復にかかる費用は部屋の面積が広くなるほど、補修する箇所が増えるため高くなります。原状回復費用を間取りごとに分けて、NOW ROOM編集部が独自に平均を算出した結果は以下の通りです。

 

間取り 間取り別原状回復の平均費用相場
1R〜1LDK 約5万円
2K〜2LDK 約8万円
3DK〜4LDK 約9万円

退去費用の注意点①「特約」とは


賃貸契約書に特約と記載されている場合は、よく確認してみてください。なぜなら、原状回復にかかる費用以外に、追加で請求される場合があるからです。
 
原状回復の義務の範囲ではない場合でも、特約に書いてあれば入居者は費用を負担しなければいけません。なかでも特に多いのは「ハウスクリーニング代」です。
 
いくら特約に書いてあったとしても、平均より高過ぎる修繕費や入居者が一方的に損をする内容の場合は、無効になる可能性もあります。
ちなみに、ハウスクリーニング代の相場は部屋の広さである程度決まっています。
 
広さ ハウスクリーニング代費用相場
〜30㎡ 約1万5000円〜3万円
30㎡〜50㎡まで 約3万円〜5万円
50㎡〜 約5万円〜

退去時の注意点②「過失」とは


過失とは、自分がその状況を知りながら放っておいたことで毀損した場合を指します。

  • 不注意で壊した
  • 知らない間に傷付けた
  • 掃除をしなかったので汚れた

 
などが考えられます。どの場合が過失に当たるかイメージしやすいように、いくつか例をご紹介します。
 
入居者が負担する可能性のある箇所は以下の通りです。

  • 壁紙(クロス)
  • 落書き、タバコの汚れ、ペットの臭い
  • フローリング
  • すり傷、シミ
  • キッチン
  • 油汚れ
  • お風呂・トイレの汚れ
  • カビなどの汚れ

 
大家さんが負担する可能性のある箇所は以下の通りです。

  • 壁紙(クロス)
  • 画鋲の穴、経年による変色、電化製品の裏の黒ずみ
  • フローリング
  • 重いものを置いた場所のへこみ、経年による変色
  • 日焼け

 
ただし、原因が入居者の過失か、経年劣化かは退去時に両者で確認します。中には、強引に話を進める業者もいるようなので、事前に指摘されそうな箇所は確認しておくのが無難です。
 

退去費用を高額にしないためのポイント


本章では、退去費用を抑えるためのポイントについてご説明します。
 

普段からきれいに掃除しておく

まずは、当然ですが、普段から部屋をきれいに掃除しておくことが重要です。
 
普段から汚れを落としておくことも重要ですが、退去時にはとくにていねいに掃除をしておきましょう。注意する場所は以下の通りです。

  • キッチンの油汚れ
  • 壁紙
  • 床、畳
  • トイレやお風呂などの水回り

 

火災保険を利用する

契約している火災保険によっては、原状回復にかかる費用を抑えることができます。火災保険の契約内容を確認してみてください。

  • 借家人賠償
  • 個人賠償

 
「偶然の事故」によって傷を付けたり壊したりした場合は、上記の補償の対象になる可能性があります。ただし、その状況によって保険会社が判断するので、しっかり説明する必要はあります。
 
注意点を以下に挙げておきます。

  • 事故が発生したらすぐに連絡する
  • 証拠として写真を撮っておく
  • 退去時の修理費用には使えない


退去費用が高いときの対処法


本章では、高額な原状回復費用を請求された場合の対処法をご説明します。

まず、退去することを伝えると管理会社や大家さんが立ち会い、一緒に部屋の現状を確認します。この際に補修が必要な場所が分かります。重要なのは、原状回復にかかる費用の内訳をしっかり確認することです。
 
どの場所をどのように補修するのか分からない場合は、必ず詳細を説明してもらってください。もし、その場で金額を出されてサインを求められたとしても、納得できない場合は交渉します。
 
原状回復にかかる費用の負担割合について納得できず、交渉しても解決できない場合は国民生活センターに相談してみましょう。
 
また、「少額訴訟手続」という方法もあります。少額訴訟手続とは、少額の金銭の支払いをめぐるトラブルを、少ない費用で迅速に解決することを目的としています。
 
具体的には、60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争を解決する審理手続のことです。
 

賃貸の退去費用は相場以下に抑えよう!


退去費用が高額にならないようにするための注意点をあらためて以下にまとめました。
 

  1. 入居時に部屋をチェックして、証拠となる写真を撮っておく
  2. 普段から掃除をして、部屋をきれいに使う
  3. 家具や家電もていねいに扱い、部屋に傷を付けないようにする
  4. 退去前は特にきれいに掃除をする
  5. 原状回復にかかる費用について交渉する


本章でご紹介したポイントを活用し、退去費用を相場以下に抑えてみてください。

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